星が舞う冬空の下で流れた涙

いくつもいくつも胸の中を通り過ぎていった思い出がふっと蘇る。


そんな日が冬を飾る夜がある。


かじかんだ手は同じように冷えていた。だけど、手を重ねてみたら温かい。

きっと心が静かにちょっと早く動いたから。


息も白く、クリスマスが近づいた日。

街の電光は冷え込んだ空気の中で、光の海を称えていた。

急いで帰ろう。冷え込みがひどくなってきた。

でも、もうちょっとだけ。もうちょっとだけ。


いつまでも、いつまでも、その海が称える光の小さなオーロラを見ていたかった。


瞬間、小さな震えがあった。

また、来よう、また来よう。

まだいる。まだいる。

顔をしからめても、いけないよ。

風邪を引くといけない。

さあ帰ろう。

帰って温かい紅茶を入れよう。

温まったらくっついて2人で絵を描こう。

いつもの下手な絵で。

2人で笑おう。

だから帰ろう。


もうちょ・・・・。

ね?帰ろう。


分かったと悔しそうに言う。


こんな些細なやり取りが、ピューっと吹いた風と一緒に心の中を吹きぬけた。


ふと目に浮かんだ涙が頬を冷やした。



人影まばらになった、その日の光の海の中で、コツコツコツコツとなる靴音を誰にも親しい目が聞いていた。