どれだけ求めても、届かない深い泉へ向けて

何故、どれだけ求めても、届かない今日という日の泉が。

僕らの息する、家々を指す日の光の中で、それはいつも深い深い所に隠れていた?


秒針を刻むごとに、僕らの世界は豊かになり、その薄皮一枚下では、終わりない戦いが続き、いつも空腹に喘がないといけなかった。



先生は言わなかっただろうか。

「これが良いのだ。」


先生がそういうんだから間違いなんてあるはずもなかった。

疑えたか?


心は苦しんでいくのに。


いつも僕らを叱る、僕らを攻めるこの弱さと言う先生は。


いつも、時々に従って、違うことを言っていた。


空が綺麗だったので、それでもいいのかなと考えた。



もちろん、雨も降って、雷鳴って、木々も枯れ、血は流れたし、暴言も聞いた。


だけど、春が来て、虹が出て、山に群青する緑は風にやさしく揺れて、思わず微笑んじゃう。


それが、僕らの知っている現在だ。



違ったのかな。


僕ら、生きてる様に見えてたけど。


そんな、吐息が裏付ける事実すら、疑って、震えて。


何がそんなに怖いのか。


怯えた。


怒りを覚えながら、恥じながら。

笑顔を、笑いを、空気を。


乱してはならない!

その言葉は皮膚を通して、お腹の弱い所、暗くて暗くて深い所に突き刺さって、動かない。


いや、でも。


口答えなんか出来ない。

そんなこと出来ない。

出来なくても、僕らは人を傷つけて、笑って、笑われた。


どこで、誰が泣いていても、聞こえなかったし、聞こえても聞こえないフリをしていなきゃまずかった。

それが、僕らを縛る空気。


僕らの誇り。

空気。

なんと力ある存在だったか。

姿は見えなかったけど。


建物は随分立派なモンで、見た目に凄くて、近寄りがたい。

近寄ったら、ただの鉄の塊だったりした。


なんだ。


それでも、少し離れるだけで、それはやっぱり目を離さずにいられなかった。


その泉は遠く、僕らの脳裏にだけ、その存在を訴えていた。


その泉から呼びかける声を掻き消す力が僕らには楽しくて

その声の必死さに、気づきながら、心まで、震わせて、

涙まで流しても。

その泉が遠くから響かせる声を誰一人聞いちゃいなかった。


その声。

その言葉を。

たた、今聞きたくて。

この空しさを乗りこなそう。